
第36回 将棋による新たな縁
藤井聡太さんからの刺激
2018年になり、サスケ工房で6年目を迎えた。
毎年のように入院による業務離脱を繰り返しながらも、なんとかここまで続けてこられたので、今年こそはという思いは強かった。
しかしプライベートでは、息子が東京の大学に進学して以降、何かポッカリ穴が開いたような感覚があった。
つまり高校野球での応援が一つの張り合いになっていたため、それがなくなってからは休日は目的もなくダラダラと過ごすことが増えたのだ。
そんな状況のなか、新たな存在が私の心境を変えていくことになる。
その存在とは、当時プロデビューしてからまだ一年しか経っていないにも関わらず、連日テレビ等のメディアで取り上げられていた将棋界の寵児、藤井聡太さんのことだ。
実は私にとって将棋は小学生高学年からの趣味で、人生においてかけがえのないものだった。
しかし障がいになって以降はそれまでよく出場していたアマチュアの大会に出ることも諦めていた。
諦めていた理由は実力のことというよりも、むしろ車いすの姿で出場することへの引け目のような意識があったからだ。
仮に畳の上での対局会場だった場合、運営側にも迷惑がかかるだろうし、周りからの好奇な視線のようなものを勝手に感じて集中もできないだろうと思っていたのだ。
しかし、空前の藤井ブームがそんな些細な私の懸念を吹き飛ばした。
藤井さんの凄まじい活躍ぶりを目の当たりにし、純粋に「将棋って、やっぱり面白いな」と思わせてくれたのだ。
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